北斎が晩年に訪れた小布施町の北斎館も、上町祭り屋台の北斎天井絵「怒濤図」など14点を貸し出す意向。全て英国初公開。関係者は屋台から外した怒濤図の板絵だけでなく、屋台ごと英国に持ち込むことを検討中。「実現すれば展覧会の目玉になる」としている。
北斎館によると、展覧会は「北斎︱大波の彼方へ」と題して開催。90年の生涯のうち70歳代で出した版画の傑作「富嶽三十六景」や最晩年の肉筆画などに焦点を当てる。
北斎の晩年を回顧する上で小布施の創作活動が欠かせないため、展覧会を企画した大英博物館アジア部日本セクション長のティモシー・クラークさんと大阪市のあべのハルカス美術館長の浅野秀剛さんが、北斎館に収蔵品や寄託管理品の貸し出しを求めたという。
出展作品は男浪と女浪の2枚が対になった怒濤図のほか、小布施伝承の古典菊「巴錦」を描いた菊図、亡くなる直前に富士山と竜を描いた絶筆の一つ「富士越龍図」など。同町雁田の岩松院本堂天井絵「鳳凰図」の下絵も貸し出す予定。
北斎館は、主催者側で屋台展示の可否が決まりしだい、作品14点を含めた貸し出し承認を理事会に諮る。
屋台は高さ約5mあり、輸送費や現地組み立て人員などで3,000万円以上の経費を見込む。今のところ主催者から財源確保の見通しは示されていない。
北斎館は昨年10月、館内に展示している上町祭り屋台を開館以来40年ぶりに分解し、信大工学部教授の土本俊和さんの調査で輸送に耐えられることを確認。英国の屋台展示に向けて協力してきた。
小布施町の市村良三町長も「上町祭り屋台を大英博物館に展示する構想がある。全力を挙げ、町を世界に発信したい」と協力姿勢を打ち出している。
町副町長で一般財団法人北斎館副理事長の久保田隆生さんも「屋台展示は町の文化発信の機会」と期待した。ただ、展覧会は主催者が費用負担する原則も指摘している。
展覧会は大英博物館で5月25日~8月13日に開いた後、10月6日~11月19日にあべのハルカス美術館に巡回する。日本側の主催はあべのハルカス美術館、NHK大阪放送局、朝日新聞社など。
北斎館館長の橋本健一郎さんは「北斎の富嶽三十六景が新パスポートの絵柄に決まるなど、東京五輪に向けた日本の文化発信で北斎ブームが起きる可能性がある。英国展はその先陣」としている。