体長約3cmほどのイワナを一匹ずつ入れたコップから川の流れにそっと移し、勢いよく泳ぐ姿を見送った。
放流前のあいさつで児童代表の鈴木明泉(あずみ)さんは、「成長してくれてうれしいけど、放流するのはちょっとさびしい。でもきれいな鮎川で元気に育ってほしい」と願いを読み上げた。
千曲川漁業協同組合の戸谷吉一さんの説明の後、コップを傾け放流した渡辺修矢君、冨沢海翔君は大きな声で「元気に生きてよー」「でっかくなれよー」。佐藤美月さんは「水槽の水の入れ替えやえさやりは大変だったけど、鮎川に放せてよかった」と話した。
同校では毎年3年生が高甫地域づくり推進委員会の協力で、鮎川遊びやホタル学習などを行っている。イワナの飼育・放流はそうした自然体験を発展させ、継続的に地域の環境保全や命について考える活動にしたい―という名取秀樹・前校長(現長峰中校長)の願いと、推進委員会(昨年度会長=宮城清さん)の思いが合致した事業。呼び掛けに応じた千曲川漁業協同組合が昨年12月、魚卵200粒と地下水の定期的な提供を快諾した。また古谷秀夫組合長らのアドバイスを受けながら、現4年生が水槽で飼育に取り組んできた。
イワナの飼育は学校、地域としても初めての取り組み。その上、清流ではなく水槽で、2日に1度の水の入れ替え、1日3度の餌やり。何もかもが手探り状態だったが、担任の小林志津代教諭は「何とか1人1匹ずつ放流できて良かった」とほっとした様子。黒岩校長は、放流したイワナが流れに逆らい泳いでいった姿を例に「みんなもイワナのようにたくましく育って」と呼び掛けた。推進委員会・小委員会「高甫の自然事業」主任の丸田孝雄さん(下八町)らも、子どもたちの喜ぶ顔に安堵していた。
名取前校長は本紙の取材に「子どもの頃から遊び親しんだ高甫の川、自然を大人になっても忘れないで」とのメッセージを寄せた。
推進委員会は今後、イワナ学習の成果などを踏まえ、継続が可能か、放流場所は適切か―といったことなどについて学校と連携し、検討していくという。