歴史あるペンション村の後継者・空きペンション対策、若年層への認知度アップ・移住支援などを重要課題と捉えながら、最長3年の任期中に「観光客や地域の人がふらっと立ち寄って、カフェや買い物を楽しんだり、観光案内の役目も果たす場所づくり」を目指す。
実は現在、長野大学環境ツーリズム学部の4年生。3年時後半に卒業単位を満たしたため、週1度のゼミを受けることを条件に、学校から許可が下りて協力隊に応募した。現在は5年前にペンション「野ばら」を廃業した高野文夫さん・美千子さん夫妻のもとに居候している。
広島市出身。3人きょうだいの真ん中。父は山が好き。母は星が好き。「長野はいいよ~」という両親の言葉に、日下さんはいつしか長野に憧れを抱くようになっていた。
両親の勧めもあり、管理栄養士の資格が取れる西日本の大学に合格したが、自分が本当にやりたい事は何なのかを追求。葛藤の末、長野への進学を決め、学費は自分で出すから―と両親を説得した。
大学ゼミで峰の原高原を訪れ、地域が抱えるさまざまな課題を知った。同時に、広島で満員電車に揺られながら通学していた時には感じることのなかった自然の中でのリラックス感、そして人の温かさにひかれた。
2年前の9月、友人と約束していた峰の原高原の星空観望会に、急きょ一人で参加したことがある。ポツンとしている日下さんに「どちらから?」と気さくに声をかけてくれたペンションのスタッフと会話が弾み、妙に心をくすぐられた。そして「もっと峰の原の事を知りたい。峰の原っておもしろい」とわくわくしたという。
現在、43軒あるペンションを一軒ずつ訪問。オーナーの思いやこれまでのストーリーを聞き取り、SNSなどで発信する。まずは高原の魅力を外部に―。これも重要な観光業務の一つだ。
「好きなことをやらせてもらっているのだから」と、大学入学後から早朝、夜間もアルバイト。貯めたお金で自動車運転免許を取得し、峰の原生活に欠かせない車も購入した。
「以前の私は、教室で静かに本を読んでいるようなタイプの子だったんですけど、長野へ来たらすごく変わりました」。学生兼協力隊員の目線で、今は自ら観光発信の媒体となるべく、地域に溶け込んでいる最中だ。
峰の原高原観光協会に所属する地域おこし協力隊は、2年目の古川広野さん(24)と日下さんの2人。ペンション村に新しい風が吹いている。須坂市内の協力隊は計5人。