農地の機能維持や病害虫の発生抑制などのほか、景観形成にも重要な畦畔管理だが、農家にとっては時間や労力がかかる上、直接の収入に結び付かず、急斜面では転倒によるけがの危険も伴う作業だ。村では今後の管理対策として本年度、久保、黒部、天神原の3地区をモデルに本格的に芝生化の試行を始めた。
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モデル地区の一つ黒部では、前原地区保全向上活動組織が水田の畦畔で試している。9月上旬、広さ約260平方メートルの畦畔に芝の種をまいた。下段のリンゴ畑からの長さが5.4mもある急斜面だ。
水田を所有する湯本幸男さん(69)によると、草刈りは田植え前から稲刈り前にかけて年4回ほど。作業には一般的な背負い式の刈り払い機を使っているが、「足を滑らせて何回下まで転んだことか…」。転倒を防ぐために滑り止めのスパイクを履いても「石を踏むと滑ってしまう」。幸いこれまで機械でけがをしたことはないというが「作業は大変」と話す。
芝の種を無償提供した雪印種苗(本社・北海道)東京統括支店関東支店群馬営業所によると、芝は寒高冷地の栽培に適した品種。順調に生育すれば30cmほどの長さにまで伸びて斜面を覆う。1年で定着するが、その後数年かけて芝だけの状態にすることで、雑草の侵入を抑える効果が期待できるという。
同組織代表の藤澤久栄さんは「芝がしっかり生えれば具合いい。うまくいってほしい」。湯本さんも「2、3年しっかり管理すれば仕事も楽になるかな」と期待する。
村産業振興課によると、中山間地域の村内には急斜面の畦畔が多く、斜面の長さが5m以上ある規模が大きい箇所も地区によっては複数あるという。
農家の高齢化などの影響で、村営農支援センター推進協議会が2015年度から受託している田畑や畦畔の草刈り事業に対する需要は「特にことしは多い。土手の回りだけ草を刈ってほしいという声もある」と説明。近年は管理ができていない箇所も増加傾向にあるとし、今後の対策が課題となっている。
村は現状として「農家の皆さんにとって一番いい管理方法を模索しているところ」とした上で、芝生化の試みについては「芝がしっかり育つまでの間は村としても支援していきたい」と考えている。
県長野農業改良普及センター(長野市)によると、北信地区では既に飯山市や栄村で同様の芝が導入されている。同センターでは、農作業の負担軽減につながる芝生の普及を「高山村でも積極的に進めていけるようにしたい」としている。