近く旅行代理店(旅行会社)を立ち上げ、山田温泉の魅力を発信する情報サイトの運営や、旅行客の「足」を確保する有償での送迎シャトルバスと名勝地など観光スポットをつなぐ巡回バスの運行、イベント運営などの事業を計画。「湯こっCha(ちゃ)!やまだ温泉」のブランドでアピールしていく。宿泊客数が減少する中、観光関係者が連携を深め、歴史ある温泉地の再生を目指す。
山田温泉旅館組合(6軒)の組合長で、旅行会社を設立する有志グループ代表の涌井貞朋さん(48、梅の屋リゾート松川館社長)は取材に「自助努力で持続可能な事業母体にしていく。閑散とした温泉街の再生ビジネスモデルになるはず」と力を込める。
涌井さんによると、近年は一番の繁忙期の秋の紅葉シーズンでさえ宿泊客が減少し、週末、平日とも満室だった各旅館は、平日の宿泊客が半減。昨年は台風19号災害が秋の書き入れ時に直撃し、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で苦境が続いている。
活性化への取り組みは、昨年6月から旅館組合を中心に始めた。昨年は、お盆のイベントで親しまれていた花火大会と縁日を6年ぶりに開催。二次交通対策として昨年10月~今年3月には、旅館有志が共同で長野駅などと結ぶ無料送迎バス運行(1日2、3便)を試行した。1カ月当たり約400~500人の乗車があり、需要を確認できたという。
こうした取り組みを契機に、今年からは体制を整えて本格的な事業に乗り出す。7月末の設立を目指す旅行会社には、風景館、山田館、藤井荘、松川館の4軒が出資。飲食店や小売店などとも連携していく。
設立後、まずは情報サイトの開設と送迎バス運行に着手。情報サイトでは、宿泊施設の最新情報やバスの運行案内・予約、土産品や特産品の紹介、飲食店の食べ歩きマップなど情報満載で発信する。
バス運行については、同様に設立する自前の貸し切りバス会社に運行を委託する。送迎バスは山田温泉と長野駅を結ぶ直行便のほか、帰りは須坂駅や小布施駅ともつなぐ予定だ。自家用車の所有率が低い都内などに住む若い世代の開拓を狙う。巡回バスは、10月からの運行開始を目指して準備を進める。
また、8月中には観光スポット9カ所に案内板を設置する。SNSでの発信に期待し、写真や動画をセルフ撮影できるスマートフォン用のスタンドも取り付ける。
イベントでは、昨年復活したお盆の花火大会と縁日の運営を担う。朝市なども検討したいという。
涌井さんは「“山田温泉旅館”として売り込んでいく。これからは山田温泉が高山村のハブ(中心)になる」と強調。県外誘客だけでなく、「ここは北信エリアの奥座敷として使われていた。地元の皆さんに『一番近くのリゾート地は山田温泉』と再認識してもらえるようにしていきたい。それが全体の底上げにもなる」と話す。