新型コロナウイルス感染症の影響により、受診行動が変化し入院・外来共に減少。コロナ感染患者を受け入れるため、一般病棟の看護師を感染症病棟へ増員し、各病棟を一部入院制限して対応。2年度の入院(延べ患者)は前年度比14.2%減の76,307人。外来(同)は7.8%減の111,308人。
1人1日当たり診療単価は入院、外来共に増加した。入院は13.9%(6,064円)増の49,596円。外来は8.1%(1,209円)増の16,096円。「重い人が多く入院している」(同院)
平均在院日数は13.8日(前年度15.4日)。「2日短く、重い人が入院し退院している」(同)。病床利用率は68.7%(同79.9%)。「86%が黒字の目安。厳しい状況が続いた」(同)。
■コロナ患者県内最多200人受け入れ
県感染症医療の拠点病院として、コロナ感染患者を積極的に受け入れ、感染拡大に対応する適切な医療を提供した。ビジネス海外渡航者のためのPCR検査(ウイルス遺伝子増幅検出法による)を実施。結果証明書を発行した。感染症センターの機能を生かしてコロナ診療等に関する情報を提供した。
コロナ感染症への対応は、受け入れ216人(感染者195人、疑い患者21人)。入院日数延べ2,229日。平均入院日数は感染者9.7日、疑い患者3.0日。長野医療圏域外から23.1%。長野市から46.3%。外国人43人。「外国人の中には日本語が分からない人もいた」(同院)
コロナ感染症の検査実績では、PCR検査(昨年7月1日開始)341件、抗原定性検査(同)1,074件、抗原定量検査(今年2月2日開始)206件、発熱外来受け入れ(昨年7月1日開始)1,568人。
院内感染拡大防止対策では、正面玄関での体温測定、問診によるトリアージ(選別)▽一般外来と動線を分けた発熱外来設置▽状況に応じた面会禁止・制限▽電話による再診、処方せん発行▽感染者・家族のオンライン面会▽各種媒体を活用し地域住民に向けた情報発信▽福祉施設における研修会▽他医療機関での現場指導と同院での研修―を実施した。
医業収益は前年度比9,063万円(1.5%)減の58億3,820万円。県の運営費負担金は5,214万円(4.7%)減の10億5,230万円。その他経常収益は、国県の病床確保料等補助金(5億6,500万円)など6億9,678万円増の8億4,218万円。経常収益は7.7%増の77億3,268万円。
経常費用は2.6%(1億8,380万円)増の73億5,170万円。高額医療材料を使用した手術の増加により材料費が増加した。
当期純損益は3億7,948万円の黒字。「今年2月の決算見込みに比べ額は縮小したが、病床確保料を除くと1億8,500万円余の赤字」(同院)。
一方、県立病院機構全体(5病院)では、入院が1割減の216,067人、外来が7%減の372,020人。主な要因は感染患者受け入れのための入院制限や感染拡大に伴う受診控え等―を挙げた。
医業収益は4億2,200万円減となり、感染症対応に係る補助金等により経常収益は15億5,800万円増の254億2,100万円。
機構全体のコロナ感染患者受け入れは348人(感染者284人、疑い患者64人)。
運営協議会の冒頭で久保恵嗣(けいし)理事長は「当センターは県感染症診療の中心的病院。コロナ患者を昨年2月から受け入れるが、院内感染は発生していない。安心してご利用いただきたい」とあいさつした。
寺田克(まさる)院長は「県の新型コロナウイルス感染症重点医療機関の指定を受け、結核病棟を転用し、令和2年度は県内最多の約200人の患者を受け入れた。院内感染を発生させないために行動計画『COVIDロードマップ』を策定し見直しをしてきた」
「転院制限など入院患者を制限した。入院・外来収益が減少し、経営は極めて厳しい状況。だが国県から新型コロナ感染症の病床確保料の補助金が交付され、収支は黒字となった。黒字分は有効に活用したい」と述べた。
産科医療の提供では、産後の母親を支援する「須坂モデル」の実施により産科医療を充実させた。
分娩数は前年度(230人)並みの223人。コロナ感染拡大に伴い、日本産婦人科3学会は昨年4月7日付で「帰省分娩と分娩付き添いを推奨しない」との見解を発出。条件付きでの里帰り分娩の受け入れとなったため「里帰り出産を制限した」(同院)。
行政と連携して産後うつを予防する産後ケア事業では、出産後に不安を抱える母子に育児相談や指導を実施する助産師外来や母乳外来、デイケア型・宿泊型産後ケア事業の積極的な広報に努めた。宿泊型は52件(前年度42件)、デイサービス型は7件(同2件)。
高齢者フレイル(加齢に伴う活力低下)防止に寄与する訪問リハビリを強化した。訪問診療は21件減の238件。訪問看護は190件増の4,430件。訪問リハビリは149件増の4,479件。
コロナ感染拡大に伴い、面会制限があるため、在宅でのみとりを希望する患者が増え、在宅みとり件数は21件増加し31件に。
医療従事者の養成と専門性の向上では、今年3月、信大と総合内科医育成学講座(寄付講座)を開設するための協定を締結し、令和3年度から開始した。
機構本部と連携し、指定医療機関として看護師の特定行為研修を開講した。
令和3年度は 1.コロナ対策と感染症センターの充実(中等症患者の受け入れ等) 2.産科医療の充実(分娩目標250件等) 3.東棟の診療機能充実(内視鏡センター件数増、外来化学療法件数増、健康管理センター受け入れ件数増) 4.地域連携の充実 5.医療従事者の養成 6.働き方改革の推進 7.経営の安定化 8.その他で番号案内表示システム、自動精算機導入など予定している。