霧のような香煙の中で小布施の農村風景を想像してほしい―と、銘柄を「」に決めた。試作を経て完成。栗の落ち葉を模して一枚一枚職人が仕上げたお香をたくと、素朴で香ばしい匂いが漂う。「小布施の新たな土産品に」と期待が高まる。
町内で栗を加工する際に出る大量の皮は多くが廃棄される。「この地域資源に新たな命を吹き込めないか」。そうした思いと偶然の出会いが重なり、始まったのが「霧想」プロジェクトだ。
代表の林さん(35、横町)は神戸市出身。東京大公共政策大学院を修了し、都内で働いていた2018年、小布施若者会議に参加した。栗皮のエネルギー活用を構想したがコスト面などでいったんは断念。同時に町の環境エネルギー施策の重要性を実感した。小布施に30回ほど通い、20年に移住。行政の政策支援などを行う企業「ショクバイ」を立ち上げた。
チームで共に活動する地域おこし協力隊の西野竜介さん(26、伊勢町)との出会いは、西野さんが信州大のインターン生としてショクバイに関わった22年。同じ神戸市出身で、環境に熱い思いを抱く2人は意気投合した。
林さんの後輩で、東京でデザインスタジオ「ポエティック・キュリオシティ」として活動する三好賢聖さん、青沼優介さんは、栗皮の造形素材の可能性に着目。詩的な発想やデザインのコンセプトを共有する。
後に、調香師のぺレス千賀子さん(東京都)と出会い “資源循環するお香”の可能性が現実的になった。
栗の皮は町内の農家や栗菓子店から提供を受ける。天日干しした後、専用機械で粉砕。その後、ペレスさんに送り、タブノキの粉と調合して、葉の形に仕上げられる。
林さんは「町内で光が当たっていないはねだしの農作物や栗蜜などの利活用も考えていければ」と展望。アートや香りを観光と結びつける環境ツーリズムにも取り組みたい考えだ。
「霧想」は桐箱に3枚納め、詩と共に販売する計画。インテリアとしての要素もある。
あす30日までクラウドファンディングを実施中。詳細は「For Good」のサイトで。